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【ERP導入ノウハウ】グローバルロールアウト:展開順序の決め方(マッピングで判断)

  • JH
  • 1月5日
  • 読了時間: 5分

更新日:1月7日

【第2部】4章:マッピング結果から「展開順序」の期待効果と難度を読む


スコアカードによるマッピングで各拠点のポジションが明らかになったら、次は「どの順番で進めるべきか?」を整理します。ここでのポイントは、単に右上から順に着手するという話ではありません。象限ごとに、導入後に得られる効果(インパクト)と、導入の難度(進めやすさ)が異なるためです。


加えて、グローバルロールアウトではもう一つ、見落としやすい変数があります。それが 「他拠点への影響力(展開レバレッジ)」 です。

同じ象限・近いスコアの拠点でも、ある拠点が先行することで「他拠点が安心して追随できる」「現地同士の合意形成が一気に進む」という現象が起こります。逆に、スコア上は優れていても“孤立した拠点”を最初に選ぶと、パイロットは成功しても横展開が伸びないことがあります。

したがって、展開順序は 期待効果×難度 に加えて、影響力 を掛け算で評価するのが現実的です。


4.1 象限別の期待効果と難度(要点)


  • ①(DX浸透度:高/標準準拠度:高)

    導入難度が最も低く、テンプレートの“あるべき姿”を描きやすい。パイロット(モデル拠点)に相応しい。

  • ②(DX浸透度:低/標準準拠度:高)

    マニュアル業務が多くとも、本社が定めるルールに準拠していればテンプレートが適用しやすい。デジタル化支援の余地はあるが、標準化の摩擦は相対的に小さい。

  • ③(DX浸透度:高/標準準拠度:低)

    業務システム運用に慣れているためシステム導入への抵抗は低い一方、ローカル独自ルールがテンプレートとのギャップになりやすい。ギャップ解消がカスタマイズ要因にもなり得る。

  • ④(DX浸透度:低/標準準拠度:低)

    期待効果は大きく見込めるが、標準化・定着の難度が高い。①〜③でテンプレートと推進ノウハウを固めてから取り組むのが合理的。


4.2 ①の中でも「Readiness」で差が出る(UK vs Singapore)


象限①に入る拠点は、原則としてパイロットに相応しい候補です。ただし同じ①でも、実際にプロジェクトを立ち上げる上でのReadiness(=Buy-inや外的阻害要因の影響)は拠点によって異なります。


例えばUKとSingaporeがどちらも①に位置していたとしても、バブルが大きいSingaporeの方が、経営・現場のBuy-inが強く、外的要因(追加法規制対応や他大型案件との競合等)による阻害も相対的に小さい。結果として、


  • 意思決定が速い

  • Key Userを確保しやすい

  • 初期のトラブルに対して「一緒に乗り越える」空気ができやすい


といった形で、モデル拠点としての適合性が高くなります。したがって、①に複数候補がある場合は、象限のポジション(右上)に加えて、バブルサイズ(Readiness)を最終判断の決め手にするのが合理的です。


4.3 なぜ②が③より先行しうるのか(テンプレート適用の観点)


直感的には「DXが進んでいる③の方が導入が楽では?」と思われがちです。しかし、テンプレートアプローチを前提としたグローバルロールアウトでは、“標準に寄せられるか” が難度を大きく左右します。


  • ②(DXは未成熟でも、標準準拠が高い)

    現行が紙・Excel中心でも、本社ルールに沿った運用ができているなら、テンプレートの適用がスムーズになりやすい。デジタル化の欠落分は支援で引き上げられますが、プロセスの標準準拠が担保されている分、カスタマイズ発生リスクも抑えやすい。

  • ③(DXは進んでいるが、独自ルール運用)

    既存システムに慣れているがゆえに、プロセス変更・コード体系変更への抵抗が出ることがあります。テンプレートに合わない部分が“例外”として積み上がると、カスタマイズ要因にもなり得ますし、横展開の再現性が落ちやすい。


経験上、③は「導入は開始できる」が「テンプレート思想の貫徹」に苦戦するケースがあり、結果としてロールアウト全体のスピードを落としてしまうことがあります。したがって、全体最適の観点では ②→③ の順で進めた方が短距離で進むケースがある、という点は押さえておくべきです。もちろん最終的には、スコアカードから見えない要素(人間関係、政治、過去の失敗経験など)にも十分に注意が必要です。


4.4 影響力(展開レバレッジ)という“第3の変数”


ここまでの議論は「期待効果」と「難度」を中心に整理しました。しかしグローバルロールアウトでは、もう一つの変数として 「この拠点が入れたら他もついてくる」 という影響力が存在します。これはX/Yのスコアとは別軸で、横展開の加速度を左右します。


影響力の高い拠点には、例えば次のような特徴があります。


  • リージョン内のハブ拠点(人材・意思決定・情報が集まる)

  • 他拠点のロールモデル(“あそこがやっているのであればうちも”が起きやすい)

  • 共通性の高い拠点(似た拠点が多く、テンプレートの再利用率が高い)

  • 横のネットワークが強い(各国トップ/実務責任者間のつながりが強い)


この影響力が効く理由はシンプルで、ロールアウトは「テンプレートを配る」だけでは進まず、拠点間での心理的ハードルと合意形成の摩擦を下げる必要があるからです。影響力のある拠点が先行して成功体験を作ると、その成功が“証拠”として働き、後続拠点の納得感と着手スピードが一気に上がります。


なお影響力は厳密に点数化しなくても構いません。実務上は、バブルチャート上で「★(影響力拠点)」のようにタグ付けし、最終的な順番決定の際の補助線として扱うだけでも、展開ストーリーの精度が上がります。



以上が、マッピング結果に基づく「展開順序」の期待効果・難度に、影響力(展開レバレッジ)を加えた整理です。次回は、このストーリーを実行可能にするために避けて通れない、「結局は人」という論点(根回し、期待値設計、関係構築)に踏み込みます。


 
 
 

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